愛らしい赤ん坊に対して、我々はしばしば無意識のうちに声をかけがちです。
言葉を交わさなくても、彼らに話しかけるのは自然なことです。
外から見れば、まるで自分自身に話しているように見えますが、
赤ん坊への一方的な会話は、大人にとって幸福感に満ちた時をもたらします。
そんな時、赤ん坊はどのように反応しているのでしょうか？
彼らが言葉を理解できていないと思いがちですが、
実際には赤ん坊は驚くべき能力を秘めています。
赤ん坊が言葉をいつから理解し始めるのか、
その発達過程を探ってみましょう。
◎言語反応の起点は脳の活動にある
新生児はまだ首もしっかりと支えられず、小さくて愛くるしい存在です。
多くの人が、できれば一日中彼らを抱きしめていたいと思うことでしょう。
赤ちゃんと過ごす際、ほとんどの人は沈黙を保つことはありません。
私たちは、常に何かを赤ちゃんに向けて話したり
ジェスチャーや表情を通じてコミュニケーションを取ります。
自分から何らかの行動を起こしても、新生児が顕著に反応することは少ないです。
彼らの反応は基本的に微笑む、泣く、または眠る、のどれかです。
しかし、そのような初期段階でも、脳は言葉をしっかりと受け取っています。
大人が思考や言語を処理する際に活動する脳の領域が
生後2～3ヶ月の赤ちゃんでも言葉を聞くことによって活動していることが分かっています。
また、言葉以外の音、例えば玩具の音には反応しないものの
言葉には反応することが明らかになっています。
これは、脳が言語の習得に向けて早い段階から成長を始めていることを示しています。
◎感情の認識は這い始める頃に成熟している
生後数ヶ月で、赤ちゃんの脳は既に言葉に対して何らかの反応を示していますが
それが具体的な行動に繋がるわけではありません。
時には、彼らが本当に聞いているのかどうか疑問に思うこともあります。
脳が反応しているとしても、その段階で完全な理解が伴っているわけではないのです。
しかし、徐々に理解する能力は育ってきます。
最初は言葉の意味を理解する前に、話し手の感情を捉え始めます。
感情とは、話す際に伴う感覚であり、喜び、悲しみ
愛情、楽しさ、怒り、イライラなどさまざまです。
赤ちゃんはこれらを理解し始めます。
言葉の具体的な内容ではなく、感情は声のトーン
表情、ジェスチャーなど、言葉以外の要素でも豊富に表現されます。
この理解が可能になるのは約7～8ヶ月頃で、ちょうど這いはじめの時期です。
「あー」や「うー」といった単純な言葉しか話せない赤ちゃんでも
周囲の大人の感情を敏感に察知します。これは彼らの隠れた能力のひとつです。
特に、怒りの感情を理解する際、いつも笑っている赤ちゃんが急に静かになり
じっと見つめるような行動をとることがあります。
これは、何か間違ったことをしていると理解している証拠です
（もちろん、すぐに繰り返すこともありますが）。
また、周囲が楽しい気持ちの時、赤ちゃんも笑顔になりやすく、気分が良くなります。
寝かしつけの際に、言葉では優しくしていても、内心は「早く寝てほしい」と感じていると
そのイライラが赤ちゃんに伝わってなかなか寝つかないこともあります。
赤ちゃんはまるで心を読むかのように
話しかける人の感情を多様な手がかりから読み取っていきます。
これは彼らの脳の成長にとって重要なステップの一つです。
◎言語理解はいつから始まる？
実際に言葉を話すよりも先に、言語の意味を捉える能力が発展します。
例えば、「マンマ」という言葉が食事を指すことを理解し
それを適切な状況で用いるようになります。
このように、言語の意味を理解する過程が先行します。
具体的には生後7～8ヶ月頃には、言葉の意味を把握し始めるとされています。
ただし、これには個人差が存在し、一般的な目安として捉えるべきです。
感情を込めた言語の理解が始まった後に具体的な言葉の理解も徐々に形成されます。
どの状況でどのような言葉を使うべきかを学び、覚えた言葉を適切なタイミングで使用したり
反応を示したりするようになると、赤ちゃんの愛らしい一面がより一層際立ちます。
◎豊富な言葉の交流が自己価値感を養成する
言葉を話す能力がない幼児であっても、彼らは言葉の意味をしっかり捉えることができます。
それは、言葉そのものだけでなく、それに込められた感情をも理解するということです。
このことから、言葉をかける行為が非常に重要であることがわかります。
話すことができない幼児に話しかけることが無駄だと思うのは誤解です。
「おむつを変えてあげるね」「きれいになったね」「おいしいね」「大好きだよ」と
いった言葉を日常の様々な場面でかけ続けることで、子どもの自己価値感が育まれます。
もちろん、これは肯定的な言葉かけに限られます。
「なぜそんなことをするの？」「やめなさい」「それは違うよ」「ダメ！」といった
否定的な言葉は、子どもが自分を認められていないと感じさせ、自己否定に繋がります。
自己価値感、すなわち「自己肯定感」とは
自分自身を肯定的に捉えることができる心理状態を指します。
これは、前向きに生きていくための基盤です。
現代の日本社会では、多くの人がこの自己肯定感に乏しいと言われています。
自己肯定感が育つと、新しいことに挑戦する勇気が湧き
それが積極的な生活を送るための動力となります。
そうした自己価値感は、幼少期から形成されるものであり
大人へと成長する過程での対応によっても形成されます。
だからこそ、このような心理的な側面は非常に重要です。
言葉を話せない幼児期から、優しく話しかけることは
その子の未来に大きなプラスの影響を与えるのです。
◎結論
赤ちゃんが言語の意味を理解し始めるのは、生後7～8ヶ月頃からです。
それでも、実際に言葉を話し始めるのはその後となる子どもが多いのが現実です。
重要なのは、言葉の理解がスタートラインになります。
この言語理解の段階で、肯定的な言葉遣いと温かい接し方を心がけましょう。
子どもが愛されていると感じ、大切にされているという実感は
自尊心の発達にとって非常に重要です。
